ぎゅっと、ふわっと。 (ページ1)

今日:12 hit、昨日:1 hit、合計:55,115 hit

〇ページ1

.

in.s

「けえくん！」

“けいくん” でもなくて “けーくん” でもなくて、
この子から聞こえるのは紛れもなく “けえくん” 。

どうでもいいことかもしれないけど、俺にとってはそりゃもう可愛いでしかなくて、呼ばれる度に胸がきゅんとときめいた。もう社会人なのに。21歳のちゃんとした大人なのに。

「なあに、？」

「すき！」

…………… きゅん……… 。

あ、ほらまた、きゅんとした。
それはこの子が悪い。可愛いんだもん、だめだよ大人たぶらかしちゃ。………… まぁ、わざとじゃないところが憎めないんだよね… 。

りょうすけ、ちょっとちっちゃめの16歳、高１。
俺とりょうすけは付き合ってて、告白は勿論俺から。
りょうすけの親は仕事の関係で転勤続きで、ほんとはりょうすけも連れていく予定だったんだけど、当時13歳のりょうすけが『けえくんと離れたくない！』なんて駄々をこねるから、その時俺に向かってお母さんが言った言葉が

『ちょっとこの子と一緒に暮らしてほしいんだけど…』

だった。

俺はりょうすけのマンションの隣人だったから、りょうすけが0歳の頃から知っている。だから、親御さんともタメで関わることができるほどの親しさだった。

「すきすきすき！」

「わかったわかった、俺もすきだから。」

「むっ！なんかけえくん軽い！やだー！」

ねえほんとにこの子16歳なの？ちょっと詐称してない？ほんとは10歳でしたとかやめてよ？

……… あのランランな親だから、ほんとにちょっと怖くなってきたわ。