「忘れられてたまるか、たとえ家庭をもとうと幸せになろうと忘れさせない。お前が生きて覚えていることがあの世界の私の存在証明だ」 ページ44
静寂。その一言だけ。なんてこったいあんな意気揚々と入ったくせに、フェイ達相手ならいくらでも話題が尽きないというのに。目も合わせないこいつとどう話せば
思わず出た大きなため息に、こいつはビクッと肩を震わせた。これはこれは、思ったより怯えられてるなあ。理由は一目瞭然、先程のノブナガとの試合からの一連の流れか。やっとこさ冷静になって理解できた訳だ
きゅるるる、と情けない音を発したのは目の前のこいつの腹の虫。慌てて無事な方の腕で腹をおさえると、罰が悪そうに私と、私の持つうどんに視線を交差させる
こんな時でも腹は減るとは、人間はなんて空気を読まない生き物なんだか
「もう一回聞くよ、今の状況理解できた？」
「……うん」
ああ、何て素直になったんだ
「及第点。諸事情であんたを死なせるわけにいかない」
だからはい、と手に持つうどんを目の前に置いてやると、一瞬の躊躇を見せたあと器に手を伸ばした。極限まで空腹だったのか、そこからは怒濤の早さで平らげていく。たまに詰まらせたり遠慮がちにこちらを見たりしていたが、私はとことん無視した
「ごめん」
食べ終わって、その一言だけ言って頭を下げられた。私はまだそれを静観している
「俺、怖くて、姉さんに八つ当たりした。姉さんが俺を助けてくれたのに、礼も言わずに、周り見えずに姉さんの話を聞かなかった。
……今の姉さんを、全然見てなかった。俺の、俺らのしたこと棚に上げて勝手に決めつけて姉さんの大切な人たちのこと悪く言った
ごめん。本当に、すみませんでした」
ほぅ、と息をついた。正直もしもこいつが今までの愚行を謝らない、罪悪感がないと感じれば私は躊躇なくもう片方の腕を折るつもりだった。どうやらそこまで落ちぶれてはいないようだ
でも
「許さない。あんたも、あの親も、全部許してたまるか」
ビクッと肩がはねあがり、一層強く手を握りこむ。あげられた顔は苦しそうだった。ちがう、おれ、許されたいんじゃ、とうわ言のように呟く
「なにを言われても今さら私の気持ちは変わらない。死んでも忘れない
私はここと、彼らが大切だから今ここにいる。この世界で色んなことを知って、彼らのために生きたいと思った
だからあんたも、その罪悪感を一生抱いて生きていけ。忘れたら次元を越えてでも殴りにいく。たとえ幸せになろうと忘れんな
それがあんたに出来る唯一の贖罪」
「そ、れだけ？」
「なに、殴られると思った？ それとも、それすらも守らないと」
「守る！ 絶対忘れねえ！ 死んでも！
ごめん、ごめん……助けてくれて、ありがとう……」
続く (更新停止中)
お気に入り登録で更新通知を受け取ろう
←「嫌悪感を抱いている相手と話すんだから、これはもう精神との戦いだよね。これが終わったらフェイとデートだから幸せ借金の不幸返済の前払いだと思うことにする」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 357人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「HUNTER×HUNTER」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
名無しのもっけ - 面白かったです！(*^∀^*) (2020年10月3日 14時) (
レス) id: 73b959674c (このIDを非表示/違反報告)
Aaa(プロフ) - 面白いです、、、更新楽しみにしています！！！ (2020年8月3日 9時) (レス) id: 71d8bfbda5 (このIDを非表示/違反報告)
カラスネコ(プロフ) - スズリーさん» 返信遅れてすみません…コメントありがとうございます！既にお知りのようですかツンデレ×フェイタンは最高ですよ(こそっ) (2019年2月1日 20時) (レス) id: df2e6b9420 (このIDを非表示/違反報告)
スズリー - ツンデレ良いですよね！私もフェイタン大好きです(*´∀｀) (2019年1月3日 10時) (レス) id: d426f2b161 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっずー(プロフ) - カラスネコさん» いえいえ、とても読んでて楽しいですよ！フェイのツンデレ部分とかは…ヤバイ。 (2018年7月14日 10時) (レス) id: 695d4f0a8a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：カラスネコ | 作成日時：2017年2月3日 20時
