その世界 ページ15
「ねぇ、何を隠しているの?」
キッチンで中也と横並びになって野菜を切りながらわたしは尋ねた。
「手前に云う事じゃ無ェよ」
「っ!………そう、だね」
そうだ。わたし達の関係は、その言葉で一刀両断出来る程度の関係なのだ。
唯、わたしが中也の事が好きなだけ。
それ以下では有っても以上は無い。
「いっ!」
ぼおっとしていたら、指を包丁で切ってしまった様だ。
痛い。血はドクドクと脈を打つ度に流れ出てくる。
「!大丈夫か!」
焦った様な声を出した中也は、包丁をわたしの手から取って置き、絆創膏やら何やらを走って取って来た。
中也は先ずわたしの手を流水で洗って、止血して、絆創膏を貼ってくれた。
手際は良くて、止血している時も、キッチンには行かず傍に居てくれ、心は次第に安心していった。
「大丈夫か?」
「うん、お蔭様で」
わたしが笑うと中也も安心した様に笑みを浮かべた。
そして、静かな時が流れた。
「中也君って、恋人、居るの?」
我ながら間抜けな質問だと思う。
しかし、
「居無ェな」
本人から此の言葉を聞きたかった。
「わたしも…
恋人、欲しい?」
「そうだな…好きな奴なら彼女に成って欲しいと思ったりするぜ」
“好きな奴”少し前なら、中也が隠し事をしていると知らないわたしなら…もしかしたら、手放しで喜べたのかも知れない。
「好きな人、居るんだ」
「……」
中也は何も云わなかった。
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爽斗 - せれな さん» 本当ですか!!ありがとうございます!!頑張ります!! (2021年8月27日 22時) (レス) id: 5b5562e114 (このIDを非表示/違反報告)
せれな - 本当に面白いです これからも応援しています! (2021年8月25日 20時) (レス) id: 6fed7b85b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:爽斗 | 作成日時:2021年7月15日 2時