恐怖 ページ12
暫くそうして居ると、ふと人の気配がした。
「っ！」
後ろを振り返る。じっと目を凝らしてみるが、何もない。
「ヤァ、中也は見付けたかい？」
突然背後から声がした。
恐る恐る振り返ると、其処には太宰が居た。
先刻迄は居なかったのに…！
「見付けました、お陰様で」
「ふふ、善かったよ」
「住所まで教えて呉れて…」
「ん？住所は教えてないよ？」
「え？じゃあ、誰が？」
「さぁね」
「待って」
手をひらひらさせて去って行こうとする太宰を呼び止める。
「何？住所の件なら答えないよ」
「知ってるんですね」
「ノーコメント」
「何でこんな事するんですか？」
「実は私、今無職何だ」
だから何だ。わたしは心の中で悪態を着く。
「其れでさ、君を見付けちゃった訳」
ゾクリと背筋が氷る感覚がした。
悪戯っぽい笑みを浮かべる彼から、わたしは一歩距離を取った。
「君、中也が好きなんでしょ？面白い感覚だよ、私には考えられないね」
嫌だ嫌だと首を振る太宰の目には光は無く、闇は奥深く、底が見えない。
「だから、何ですか」
恐怖で口の中はカラカラに乾いていた。
二歩、三歩とわたしは後退した。
「そんなに警戒しないでよ」
太宰は云いながらわたしとの距離を一歩分近付いた。
「私は唯…」
そう云い乍ら、太宰は一歩一歩と近付いて来る。
「君達の恋の行方を知りたいだけさ」
「…！」
気付けば太宰とわたしの距離は、一歩分も無かった。
逃げようと思っても、身体が金縛りに会った様に動こうとしない。
背の高い太宰が、手をおでこに当てて、耳元で囁いた。
「楽しませて呉れ給え」
其れ丈云うと、手をパッと離してすたすたと歩いて何処かへ消えていった。
太宰からの解放された安堵からか、はなはなと身体から力が抜けていき、わたしは地面に膝を着いた。
「何なの…」
━━━━━
━━
そんなAの様子を人知れず観察しながら太宰はわらっていた。
「ふふ、一寸やり過ぎちゃったかな…？」
『そんな事無いです。尊敬します』
「尊敬されても困るのだけど…」
困惑した声を出しながらも、太宰の顔は面白い玩具を見付けた子供の様にキラキラしていた。
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爽斗 - せれな さん» 本当ですか!!ありがとうございます!!頑張ります!! (2021年8月27日 22時) (
レス) id: 5b5562e114 (このIDを非表示/違反報告)
せれな - 本当に面白いです これからも応援しています！ (2021年8月25日 20時) (レス) id: 6fed7b85b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：爽斗 | 作成日時：2021年7月15日 2時
