夢 ページ34
「Aッ…」
掠れて音にすらなって居なかったが、彼─中原中也─の声は、わたしにハッキリと届いた。
ー数秒前ー
目が覚めたのは多分、中也の声が聞こえたから。
瞼を開くと中也のくせっ毛と帽子が見えた。
「ちゅっ!」
中也だ!そう思い、声を掛けようとした時だ。
視界に誰かが割り込んできた。
その人の手にはビン。
「!!」
わたしは息を飲んだ。
──ガシャン
驚いて背後を振り返る中也。
倒れていく瞬間がスローモーションのようにわたしの目には写った。
「く、そ……」
「中也っ!」
「Aっ!」
中也はわたしの名を呼んで、心做しか安らかな表情をして意識を失った。
「よか、た……」
大丈夫、死んでない。
そう思うと同時に、わたしは眠りに落ちた。
これは、夢だ。
多分、過去の記憶。
小学校6年生。お姉ちゃんからの最後の手紙。
お姉ちゃんとは、わたしが叔母さんの所へ行ってからも手紙のやり取りをしていた。
これが、最後にお姉ちゃんから来た手紙の内容だ。
[Aちゃんへ。
早い事でもうAちゃんも6年生になったんだね。
あんなにちっちゃかったAちゃんも、きっともう、大きくなったのかな?元気にしていると良いなと思ってます!
私はAちゃんの笑顔が大好きだから、
また、会えるといいなぁ。
そしたらまたAちゃんと遊んで、たくさんAちゃんの笑顔を見たいです!
Aちゃんは、周りの人を幸せにするチカラを持ってるよ。
Aちゃんの笑顔で周りにたくさん綺麗なお花を咲かせて、楽しい毎日を送って欲しいな。
そうだ!Aちゃんは将来の夢とかある?
私の学校では将来の夢を進路希望調査票ってのに書かなきゃ行けなくて困ってるんだよね。
私の夢は、私の異能力があるから、叶いそうに無くて。
異能力のせいにするなんて、良くないよね。
でも、諦めずに頑張るつもりだよ!
Aちゃんのお手本になりたいから!
だから、Aちゃんも、夢を見付けたら諦めないで頑張ってね!
今日の格言:キミの笑顔は皆を幸せにする!
次の手紙は夢が叶ったら出すね!
もし叶ったらお祝い兼ねて会って祝宴しよう!
この約束だけで、頑張れる気がするから。
お姉ちゃんより。
追伸:私の夢、覚えてる?]
そうだ。それからわたしが現状報告と応援の手紙を出したが返事は来ず、今に至る。
そう云えばお姉ちゃんの夢、異能力って何だったっけ?
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爽斗 - せれな さん» 本当ですか!!ありがとうございます!!頑張ります!! (2021年8月27日 22時) (レス) id: 5b5562e114 (このIDを非表示/違反報告)
せれな - 本当に面白いです これからも応援しています! (2021年8月25日 20時) (レス) id: 6fed7b85b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:爽斗 | 作成日時:2021年7月15日 2時