忘れていたこと【ハリポタ】〈ドラコ・マルフォイ〉 ページ22
｢っ……お待たせ致しました。｣
僕の予想通り彼女は既にそこに居た。少し駆け足になって彼女の元に行く。
｢いえ、今来たところですので。｣
にこやかに予想通りの言葉を投げる彼女の鼻は少し赤くなっている。
｢では行きましょうか。｣
｢あ、あの。ご飯に行きませんか、マルフォイさんもお腹すいていませんか？｣
｢え、ああ、そういえば、そうですね。夕飯時ですし、行きましょうか。何食べますか。｣
｢何か美味しいものがいいですね、マルフォイさんどこかご存知ですか？｣
｢そうですね、では…。｣
『私オムライス食べたいー！』
顔も思い出せない大切だった気がする女の子の声が頭の中に木霊した。
｢オムライスなんかどうですか？｣
｢いいですね！私オムライス大好きなんです！｣
上品な女性は子どものような笑顔を浮かべて賛成する。なんだか見覚えがあると思うのは例の女の子をただ都合の良いように彼女に重ねているからだろうか。
｢行きましょうか。｣
｢ええ。｣
ｺﾂｺﾂとした音が後ろからついてくるのを感じながら歩調は彼女にとって速くないだろうかと考える。
｢こちらのお店です。｣
｢良い雰囲気のお店ですね、以前どなたかといらした事があるのでしょうか？｣
｢いえ、あー、どうだったかな。美味しかった記憶は鮮明にあるので、恐らく誰かと来たことがあると思うのですが。｣
『美味しいね！』
またあの声。幸せそうな記憶。でもこれがいつだったのか、誰との思い出なのかはぼんやりとしたままだ。
｢大丈夫ですか？｣
｢ああ、いえ。お気になさらず。入りましょうか。｣
｢はい、お腹ペコペコですね。｣
曖昧な返事と考え事をしていた僕を心配するように問いかけた彼女は何かを探るような目をしていた。それでも僕が入ろうか、と提案をすればホッとしたように笑顔を見せてオムライスを楽しみにしていた。
ｶﾗﾝｶﾗﾝと扉が僕らの来店を告げれば、店員がいらっしゃいませ、と声をかけてきた。
2人と伝えると奥の方にあるテーブル席へと案内をされる。ごゆっくりどうぞ、と言って店員が下がった。
さて、クラシカルなオムライスにしようかそれとも、と悩みながらメニューを捲る。
そういえば彼女の名前を訊いていない。
彼女と僕は面識があるのかないのか。少なくとも彼女は僕のことを知っているのだから、もしかしたら外見が変わりすぎて僕が気づいていないだけなのかもしれない。オムライスを決めたならまずは彼女の要件を聞く前に彼女の素性を探ろう。
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作者名：DNA | 作成日時：2020年7月22日 23時
