忘れていたこと【ハリポタ】〈ドラコ・マルフォイ〉 ページ19
「すみません、道をお伺いしてもよろしいでしょうか。」
仕事の所用の帰り道にそう声をかけてきたのは僕と同年代ぐらいの女性で、暖かくなってきたと言えどまだまだ肌寒い春にクラシカルなトレンチコートを身にまとった上品な人だった。
「ええ、構いませんよ。どちらまででしょう。」
ご案内しますよ、と笑顔を浮かべながら返すと女性は一瞬少し悲しそうに瞳を震わせ、ニコリと笑顔を返した。
「マルフォイさんのご自宅に行きたいのですが、道に迷ってしまって。」
そう言って地図を出す。
「驚きました、私に御用でしょうか。」
「あら、貴方がドラコ・マルフォイさん?」
すごい偶然ね、と言う割に彼女はひとつも驚いた様子は見せず、代わりにホッとした目をしていた。
「折角会えたところ申し訳ないのですが、これからまだ仕事が残っていまして。」
「そうですか、まだ日が高いものね。お仕事中失礼致しました。いきなり押しかけるのもいけませんね、ご都合の良い日時を教えて頂けますでしょうか。」
「今日は終業後予定はありませんので、そうですね、6時頃ならお話を伺えるかと。」
「では本日午後6時でございますね。」
「また迷子になるといけませんね、わかる場所で待ち合わせをしましょう。キングス・クロス駅はわかりますか。」
「ええ。ではそこで6時に待ち合わせしましょう。時計の下でお待ちしております。」
わかりました、それでは後ほど。と彼女と約束を交しその場を後にした。
それにしても、彼女は何者なんだろうか。表情から察するに僕をドラコ・マルフォイと知っていて、声をかけたように思えた。迷っていたと言うのは嘘か?というか、あの声、どこかで聞いたことのあるような…。
ブーブー
電話か。
「はい。」
〈もしもし!?マルフォイ?あなた今どこにいるの?頼んでいた資料まだかしら?〉
「ああ、グレンジャー。すまない、今からそっちに戻るところだ。」
〈時間に厳しい貴方のことだから、どこかで油を売っていたわけじゃないでしょうけど。急いで頂けると嬉しいわ。〉
「ああ。すぐに届けるよ。」
〈ええ、ありがとう。お気を付けて。〉
忙しい彼女らしく簡潔に要件を伝えて電話は切られた。さて、考え事は後にして、今は頼まれた資料をグレンジャーに届けるとしよう。
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作者名:DNA | 作成日時:2020年7月22日 23時