66 ページ16
.
やっと京介の腕の中から解放されたものの
私の心臓は相変わらず鳴り止まなくて
真っ赤な自分の顔を隠すように下を向いたままでいると
京「ほら行くぞ」
なんて何もなかったかのように
私の少し前に立ってこっちを見ている京介
その言葉に渋々顔を上げれば
京「A顔真っ赤、笑」
『…な、うるさい』
京「早く行くぞ、もう転ぶなよ」
『だからうるさいってば』
ケラケラとえくぼを浮かべながら笑う
いつもの京介の表情に安心したのも束の間
右手になにか暖かいものを感じたと思えば
京「こうすればもう転ばないでしょ」
『…え、』
私の右手は
京介の左手に包まれていて
『…//』
あまりにいきなりで驚いて声も出なくて
私よりもはるかに大きい骨ばった手に不覚にもキュンとしながら
昔とは違ってちゃんと男であることを思い知って変に緊張する
『…だからいきなりすぎ、』
京「だめ？」
『だめじゃない…けど』
京「離すなよ、どうせまた転ぶんだから」
『うん…わかった、』
京「あっれ、めずらしく素直」
『うるさい緊張だわあほ』
京「笑、Aかわいいね」
『…絶対楽しんでるじゃん』
京「まあ俺も緊張してるけどね」
『…嘘だ』
京「ほんとだから笑」
そう言った京介は
繋いでいる手を少し強めにぎゅっとしてくれて
そのまま私達は花火大会の会場へと歩いた
会場に着くと今年も相変わらず沢山の屋台が出ていて
見慣れた、変わらない光景のはずなのに
京介と繋がれた手が熱くて、何もかもが違って見える
京「いつも着いた瞬間大食いに走るのに、今日はやらないんだ？」
『な…人をフードファイターみたいに言うのやめて』
京「フードファイターだろ」
『…』
京「でもま、帯しんどくならねえ程度に食えよ」
『…うん』
ほんと、嫌味言ったと思えば
最後はちゃんと優しくて反応に困るんだけど
なんて思っていたその時
「あれ、京介とA？」
京「げ…、」
京介が嫌そうな顔で見つめているその先には
私達と同じように浴衣を身に纏って手をつないでいる
柾哉くんとりこさんが立っていた
柾「京介まじで浴衣着てるじゃん」
京「…まじで会いたくなかったんだけど」
柾「え〜ひどくない？そんなこと言わないでよ」
京「…はあ、」
溜息をつくなり
さっきよりも更に嫌そうな顔になる京介は
拗ねた子供みたいでなんだか可愛かった
.
67 -Kyosuke side-→←65 -Kyosuke side-
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1007人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「INI」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ふふ - 続編楽しみにしてます！ (11月30日 2時) (
レス) id: 50497ba2dc (このIDを非表示/違反報告)
rmpgmkt0729(プロフ) - いつも見させていただいててキュンキュンさせてもらってます♡ 今後の展開が楽しみで毎日見返してます (6月15日 11時) (レス) id: e1490d9265 (このIDを非表示/違反報告)
みょん(プロフ) - 久々の更新嬉しいです！これからも楽しみです！♡ (6月7日 8時) (レス) id: 4f2a674662 (このIDを非表示/違反報告)
あいう(プロフ) - 更新いつも楽しみにしてます！ほんとに作者様の書くお話めちゃくちゃ好きです（ ; ; ）♡ (2023年1月18日 22時) (レス) @page11 id: e27a4b5f22 (このIDを非表示/違反報告)
くま(プロフ) - 一気に読ませていただきました！切なかったり、キュンキュンしたり、すごく感情移入して読んでしまいました。作者様の文才、素晴らしいです（ ; ; ） (2022年6月6日 23時) (レス) id: ff03694f37 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さぼてん | 作成日時：2022年5月2日 21時
