私は今日もトスを上げる【3】

107話 ページ9

翔陽と侑の速攻に反応した影山だったが、アウトになる


ビーチで鍛えた足腰のおかげか翔陽のジャンプはより高く、より早くなっていた


『ほんと強くなる…』


陽奈は嬉しそうに言う


すると、木兎が手拍子を始めた


あぁ、この人はこういう人だった


世界が、木兎を応援するかのような


木兎のサーブだ


それを星海が上げて、歓声は横取りされていたが


牛島もめちゃくちゃ強そうなスパイクを打つ


あれとったら腕はじけるのかな


陽奈は昔研磨が言っていたことと同じことを想像した


佐久早のスパイクも影山がとったと思ったら変な方向へ曲がっていった


翔陽のサーブはジャンプサーブだ


しかしこれはギリギリアウト


その後のラリーで翔陽が返したボールはロメロの前、嫌なとこに落としたはずが、それを利用して速攻をしてきた


これが世界か！


陽奈は目を輝かせて食い入るように試合を見つめた


翔陽はレシーブが上手くなっただけじゃなく、自らを囮に使う技まであみ出していた


『私の片割れ、凄い！』


陽奈は笑いながら言った


夏はよく姉ちゃんもすごい！というが、私はバレーに関しては一般人よりちょい上レベル


翔陽には到底叶わないし、一生懸命やっている夏の方がメキメキと成長していて凄い


だからこそ、そんな2人を陽奈は今、自慢したくてしたくて堪らないのだ


どうよ、私の兄妹凄いでしょ？って


そのせいで部員たちに呆れられてるのは申し訳ないと思ってる、うん


翔陽がトスを上げた


強くなると決意した顔で言ったあの日、トスを上げてくれと頼んできた日、喧嘩をした日


様々な翔陽を思い出し、陽奈は少し涙ぐんだ


ブラジルに行くと聞いた時、不安だったけど応援したかった


だから、いつも通り、強くなって帰ってきた翔陽を見て安心したのだ


強いって、自由だ

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