42話 ページ43
音駒の男バレに来てからというものの、よく「チーム」というもの実感するようになった
中学時代、一緒に喋る友人もいなければ、バレーを教え合う仲間もいなかった
翔陽の双子だと知られるといつも驚かれた
なんであいつが、あんな子が、と
翔陽は多分それに気づいてた
だから高校では双子とは言わなかったし、喧嘩別れした私と仲直りするまでは言わないように、とでも思っていたのだろう
仲間って、友達って、よく分からない
今もそれは変わらない
でも、この人達のことならもっと知りたいと思う
黒尾のバックアタックが決まり、笛が大きく鳴って音駒が1セットを取った
2セット目の後半
戸美は相変わらず戸美のやり方で勝利をつかもうとしている
福永が打ったボールもピンサーで入った人の体でアウトかインか分からず、結局アウトになった
やり方が汚い、けれど陽奈でさえ感心してしまうほどの徹底ぶり
相手がなんと言おうと、周りがなんと言おうと、自分たちのやることを貫く
それは陽奈の性格と同じようなものだった
『私はあんな汚くないですけどね……』
陽奈の嫌そうな呟きに夜久は首を傾げた
「ワンチ!」
リエーフが叫び、黒尾がオーバーで取ろうとする
しかし、ボールは上がらずに後ろへ落ちた
「芝山!」
黒尾は手をかばい、芝山の元へ行った
「一瞬頼む。爪やった。血止める」
「はい!」
芝山がコートへ入る
『黒尾さん、指洗ったら見せてください』
「おう」
黒尾はそう返事して走っていった
マッチポイント、黒尾さんも夜久さんもいない状況
信頼、それって案外、簡単に揺らいでしまうものだと陽奈は思っていた
家族という絆でさえ揺らいでしまうのだから
『勝て』
陽奈は思わず呟く
けど、今、私は彼らに落胆していない。信じているから
このチームは私に色んな感情をもたらしてくれる
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作者名:サンマ | 作成日時:2021年10月26日 21時