私は今日もトスを上げる (ページ16)

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15話ページ16

梟谷と烏野の試合では翔陽は下げられていた

こうして最初の夏合宿は幕を閉じた

烏野の見送りの際、陽奈は少し後ろの方で烏野を見ていた

すると、翔陽と目が合う

陽奈は咄嗟に逸らした

｢陽奈｣

しかし、翔陽は気にせずズンズンとこちらに歩いてきて、名前を呼んだ

『なに』

陽奈は自分と瓜二つの顔を見下ろす

あの日からあまり身長が変わっていないように思える

｢俺は、弱いから……勝てる方法を考えるぞ。そして今度こそ、強くなる｣

翔陽はそう言って陽奈を指さした

｢だから、待ってろ！絶対、お前を失望させない！｣

陽奈は拳を握った

『あっそ……私はもうバレーしてないからどうでもいいし』

｢よくない！陽奈はすごいやつだ！強い！それは今でも変わらない。マネージャーしてるのは驚いた、けど、それでもバレーから完全には離れてない。だから、俺が強くなったらトス、上げてくれよ｣

翔陽はそう言って太陽みたいに明るく笑った

陽奈は強く、強く拳を握った

『私が……認められるくらい強くなったら、考えてもいい』

｢おう！認めさせてやる！絶対！じゃあな！｣

翔陽はそれだけ言うと、走ってバスに向かった

烏野の選手を乗せたバスは出発する

｢良かったね、日向ちゃん｣

それを見送っていると、横から黒尾が言った

『仲直りしたわけじゃないので』

｢素直じゃないんだから｣

『余計なお世話です』

｢反抗期だねぇ｣

黒尾は陽奈の頭を優しく撫でた

『……黒尾さん』

｢はい｣

『少女漫画の読みすぎです』

陽奈はそう言って黒尾の手を叩き落とすと、校舎の中へと歩いていった

｢ほんっとに辛辣！｣

黒尾はブーブー文句を言いながら着いてきた

陽奈は久々にスマホのブロック欄にある翔陽のメールアドレスを見つめた

こっちに来てスマホに切り替えた時、消すんじゃなくてブロック欄に残したのは多分、自分でも未練があったからだ

嫌いだと言っておいて心配をする、嫌いだと言っておいて希望を持たせる

好きの反対は無関心なんて言葉に賛成は出来ないけど、少なからず翔陽のことを今はそんなに嫌いじゃないのかもしれない