〈ツイステ〉海と花束 (ページ43)

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4話ページ43

( フロイド side )

あー、めんどくさ。
なんかぎゃーぎゃーと騒いでる2人をよそに、
俺はAちゃんの部屋へと向かった。

体調不良とか、嘘だろ。
俺に会いたくないだけじゃん。
なんできすしただけで怒んの？減るもんじゃないし。
考えると、余計にモヤモヤしてくる。
無意識に早歩きになっていたようで、
あっという間にAちゃんの部屋へついてしまった。
コンコン、と軽く扉をノックする。

「Aちゃ～ん。俺」

「帰って」

即答。
声の調子はいつもと然程変わらなかった。
いや、いつもよりちょっと怒ってる感じ。
めんどくさくて、俺はため息をついた。

「なんで怒ってんの？キスしただけじゃん」

言ったすぐ後、中からドタドタと大きな足音が
此方に近づいてきた。
そして勢いよく扉が開かれ、顔を真っ赤にした
Aちゃんが出てくる。
休む気満々だったようで、寮服ではなく部屋着の
ワンピースを着ていた。

「"だけ"って………！あれは僕の……僕の、」

俯いて、ぽつりと呟く。

「…ファーストキスだったんだよ…………」

涙を含ませた瞳、紅潮する頬、唇。
なんだか胸が締め付けられるような感覚がした。

「……あー、やばい、なんかきゅんときた」

「え？」

俺は扉に手を掛けて、無理矢理押し開け部屋に入り込んだ。
あっさりと侵入成功。
片手で扉を閉め、そして鍵を掛けた。
突然のことすぎて固まるAちゃんは、
本当に小魚みたいで、可愛い。

「ふ、フロイド、」

「俺が初めて、ってこと？」

「………そう」

「ふ～ん…」

ずかずかとAちゃんに歩み寄る。
Aちゃんは怯えた様子でこちらを見上げて、
少しずつ後退りしていった。
だがすぐに壁に追い詰め、Aちゃんの両サイドに
手を置いて、逃げ場を無くした。

"初めて" か。
目の前のこの少年が初めてキスした相手は、俺。
その事実に、俺はひどく興奮した。

服の首元をずらすと、昨日つけた跡が顔を覗かせる。
跡はまだ紫色で、痛々しい。
それを、つ…と指で撫でると、Aちゃんは
小さく肩を跳ねさせた。

「あーあ…これ、もう消えないかもね？」

「アズールになんとかしてもらうから…」

「あっそ。……そしたらまたつけてあげる」

と言うと、「馬鹿！」とまた怒鳴られて、
部屋から追い出されてしまう。

…顔を真っ赤にして怒るAちゃん、可愛かったなあ。
また悪戯しちゃお、と、俺は気分を良くして
モストロ・ラウンジへと足を進めた。