〈ツイステ〉海と花束 (ページ5)

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2話ページ5

少年の姿は、双子と違って陸の人間そのものだった。
海中なのに息が出来ているのは何故なのだろう。

少年が人魚に歩み寄る。

「僕はアズール。…君は？一体どこから来たんですか？」

「僕は……、誰なんでしょうか」

人魚の返答に3人は眉をよせた。

「それって、キオクソーシツじゃん」

「困りましたねぇ…」

「初めて本物見た！」とはしゃぐフロイドと、心配しているように見せて興味津々で人魚を眺めるジェイド。
一方アズールは真剣に考えていた。

名前も分からない、ましてやどこから来たのかも分からないとなれば、彼はこれからどこに帰ればいいのか。
きっと一人では生きていけないだろう。

「…しょうがない。彼の記憶が戻るまで僕たちで面倒を見ましょう」

アズールの言葉に、人魚は目を丸くして驚いた。

「え～！？俺やだよめんどくさい」

「まぁまぁ。楽しそうでいいじゃないですか」

2人も了承したらしい。
だが肝心の本人はまだ何が起きているのか理解していなかった。

「え、えっと…」

「さて、貴方の寝床ですが…」

人魚が発言しようとすると、アズールに遮られてしまう。
お前に決定権は無いのだとでも言いたいのだろうか。
人魚は諦めて3人に従うことにした。

突然ジェイドが何か閃いたような顔をした。

「アズールと一緒に寝たらいいんじゃないですか？」

「なッ！？」

アズールが少し情けない声を上げる。

「いいじゃんいいじゃん！アズールが面倒見るって言い出したんだしー？」

「それとも」とフロイドが続ける。
人魚はなんだか背筋が寒くなったような気がした。

「小魚ちゃんは…俺たちと寝る方がいーい？」

ずい、と顔を近づけて甘い声で囁く。
吐息が耳にかかり、人魚は顔を真っ赤にして頭を横に振った。

「ホラ！小魚ちゃんもアズールと寝たいって」

「貴方がそう仕向けたんでしょう…」

アズールはため息をついて眼鏡をクイ、と上げる。
そしてなにやら気難しい顔をした。

「僕の寝床は……駄目です。他を探しましょう」

「さあ」と人魚の手を取ると、海底を進んで行ってしまう。

双子はそんなアズールの後ろ姿を「やれやれ」といった顔で眺めていた。

「ほんとの姿、気にすること無いって言ってんのにさー！」

「アズールは変わらないですね…」

そう言って、2人もアズール達の後を追って泳ぎ出した。