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『美味しそうな君』-1話 ページ40

( No side )


「Aちゃんってさあ…… 美味しそうだよね」

「へ?」


モストロ・ラウンジの閉店作業の最中。
Aはモップで床を拭いて、フロイドはその様子を
ソファに座りながら眺めていた。
突然放たれた気分屋の言葉に、Aは顔をしかめる。


「急に何言ってるの。…ほら、フロイドも掃除してよ」

「俺のやること全部終わったんだもん」


フロイドはソファであぐらをかきながら、
引き続きAを眺めていた。
そしてまたぽつりと、


「ほんと、美味しそ〜。どんな味すんのかな」


恐ろしい発言を聞いて、
Aはモップの柄を持ちながら後退りした。
この男は、いつ何をするか分からない。
危険人物だ。


「こ、怖いってフロイド…。食べないでよ…?」

「…やだ」

「え」


突然強い力で腕を引かれる。
抵抗する間もなく、Aはソファに押し付けられていた。
カラン、とモップが床に落ちる音がする。


「なにすっ……んぐ」

「しー」


喋ろうとするとフロイドに手で口を
抑えられてしまう。
すると、コツ、コツ、と誰かが歩く音がした。


「あれ、フロイド先輩とAが居ないな」

「先に部屋に帰ったんじゃないか?」

「そうだよな。ハァ〜、今日も疲れたな〜」


他の寮生たちだ。
掃除は終わったらしく、だんだんと足音が
遠のいて行った。
2人がいるソファは、ガラス張りの壁の方を向いていて、
他の寮生たちからは見えないようになっているため、
全く気づかれることは無かった。

フロイドの力が緩んで、Aは無理やり
己の口を塞ぐ手を剥がした。


「ぷはっ!…苦しいって!ほんと、どうしたのフロイド…」

「…食べてみていい?」

「はあ?だから良くないって…―」


言い終わる前に、フロイドはAの首元に
顔を埋めた。
そして襟元を乱暴に開き、白い首筋を露わにさせる。

…やっぱり、美味しそう。

フロイドは舌舐めずりをして、
その綺麗な肌に噛み付いた。


「いっ…た、」


ギザギザの歯が食い込み、刺さる寸前で口は
離された。
フロイドは青く残った痛々しい噛み跡を満足そうに
眺めると、それをぺろりと舐め上げた。
そして、その味を口の中で確かめて言った。


「んー。……ちょっとしょっぱい?」

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作者名:inucoro | 作成日時:2020年5月27日 3時

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