4話 ページ36
「飲むのは初めてですか?炭酸飲料」
「たんさん…」
グラスを見ると、緑色の液体の中で
気泡がしゅわしゅわと元気に浮き上がっては、弾けている。
なるほどこの液体は
"タンサンインリョー"と呼ぶらしい。
面白い飲み物だが自分は少し苦手かもしれない、
と思いながら、上にのっかっているアイスクリームを
スプーンで掬って食べて口直しをした。
「……先程も言いましたが…アズールは貴方が心配なんですよ。ほら、昔深海で迷子になったことがあるでしょう?」
「う…」
思い出したくない過去だ。
僕はスプーンでアイスクリームを崩し、
液体にじんわりと溶けていく様子を眺めていた。
「貴方が大事なんです」
「…大事?」
そう聞いて、思わず表情が緩んでしまう。
そうか…アズールは僕のことがそんなに大事なのか。
再びストローに口をつけたところでハッとする。
危ない。ジェイドのペースに乗せられて、
作戦のことを忘れかけていた。
「…でも、やめてくれないなら僕にも考えがあるから」
一気に液体を吸い込んでグラスを前に出す。
「ご馳走様」と一言言って、開店準備に取り掛かった。
*
それから、アズールに何を話しかけられても
僕はガン無視を続けた。
そしてなるべく視界にも入れないように。
無視を始めて一週間は経っただろうか。
したくないことをするのは辛かった。
僕だって本当はアズールと話したいし。
「やっと一週間経った…」というかんじだった。
だがアズールは無視をしても全く折れなかった。
僕と話せなくてもいいんだ、
と捻くれた考え方をしてしまう。
怒っていたはずなのに、何故か悲しくなって、
授業中もずっとアズールのことが頭から離れなかった。
「……あのさあ」
「……え?あ、ごめん…何話してたっけ」
休み時間、エースたちと話している最中に
またいつもの考え事をしてしまって、
声をかけられてハッと意識を戻した。
その様子を見てエースがため息をつく。
「いや、全然いいんだけど。…で?どうなったの、あの作戦」
「うーん… それが、無視しても全然効果なくて」
「思ったよりしぶといんだゾ…」
「やっぱり、ちゃんと話し合うしかないんじゃないか?」
デュースの言葉に全員が頷いた。
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作者名:inucoro | 作成日時:2020年5月27日 3時