〈ツイステ〉海と花束 (ページ31)

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4話ページ31

「はい、A！あ～～ん」

「待ってください。食事前に水分を摂らないと
喉を詰まらせてしまいますよ」

一体これはどういう状況なのか。
右隣にフロイド、アズール、左隣にジェイドが
座っていて、
フロイドはフォークで料理を取って口に持ってきて
ジェイドはストローを向けてドリンクを飲ませようと
している。
そして、アズールはその様子を優雅に眺めながら
自分のドリンクを飲んでいる。
僕は急いで2人の手を掴んで止めた。

「っもう！子供じゃないんだから1人で食べーー…」

「あ～～ん！」

僕が文句を言おうとした途端、フロイドのフォークが
口の中に無理やりねじ込まれた。
咄嗟に口を閉じるとスッとフォークが抜かれる。

口内に残った塊を渋々咀嚼する。
その瞬間塊からじゅわぁっと汁が溢れ出し、
溢すまいと思わず口を手で覆った。
…なんだこれ。
今まで味わったことの無い味に、僕は衝撃を受けた。
噛むほどに美味しさが増すそれは
あっという間に口の中で溶けてなくなってしまう。

「どお？美味しいでしょ」

「……………ーしい」

「…え、もしかしてあんま美味しくなかった？」

「美味しい……」

僕は目を輝かせてフロイドを見た。
陸の料理はこんなに美味しいのか。
深海での食事はほとんど無味か塩辛いかだったので、
今まで食に興味を持ったことなど無かった。
だがこれは… もっと食べたい、と思ってしまう。

僕は目の前の料理を次々に口に放り込んだ。
どれも味付けが工夫されていて飽きない。
がっつく姿に、3人は拍子抜けている様子だった。

「A、そんなに急がなくてもこれからいつでも食べられますから」

「んっ…」

ジェイドが僕の口をナプキンで拭ってくれる。
夢中になりすぎて、口にソースがついていたことを
全然気にしていなかった。
お腹も少し膨れてきたので、少し食べるペースを落とす。

テーブルに肘をついて僕を眺めている
フロイドに気付いて食べる手を止めた。
そういえば、3人はこんなところに居て
大丈夫なのだろうか。
随分楽しそうにこちらを眺めているようだが。

「3人とも…他の新入生と話したりしなくていいの？」

「そんなこと後からでもできますから」

アズールの言葉に、2人もうんうんと頷いた。
「僕を観察することも後からできると思うけど…」
と内心呆れながら食事を続けた。