〈ツイステ〉海と花束 (ページ4)

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『名前』-1話ページ4

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僕は誰で、ここはどこなのだろう。

うっすらと目蓋を開く。
ゆれ動く水面を通し、月明かりが差し込んでいた。
ゆっくり時間をかけて水面が遠のいていく。

―僕は……沈んでいるのだろうか。

このまま独りで一生海を沈み続けるような。
そんな気がして、きゅっと目を瞑った。

下で声がする。

( 誰かそこにいるの…？ )

言葉に出そうとしても、口が開かない。
そのとき初めて、身体の自由がきかないことに気づいた。

気配が近づき、ふわりと誰かに身体を支えられる。
温かくて、優しい手。

そっと目を開くと、眼鏡をかけた綺麗な顔の少年が、僕を見下ろしていた。
薄紫色の髪の毛は波に揺られてキラキラと輝いていて、思わず見惚れてしまう。
その後ろから、同じ顔をした2人の少年が僕を覗き込んだ。

僕は口を開き、最後の力を振り絞って声を出す。

「―…あなたは……？ぼくを…助けてくれたの…？」

やっと声が出た。

次の瞬間、僕はフッと意識を手放した。

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「…んん………」

怠い身体を起こし、辺りを見渡す。
鮮やかで綺麗なサンゴが並び、上では小魚の群れが泳いでいる。
静かで、とても澄んでいる綺麗な海底。
だがどこを見ても、人魚にはここがどの辺りの海なのか分からなかった。

ふと下を見ると、巨大な貝殻の上に座っていた。
傷ひとつない、上等な貝殻。
誰がこんなところに寝かせてくれたのだろうか。

「あ～～～！起きた…小魚ちゃん……」

「わっ…！？」

突然視界いっぱいに映る少年の顔。
さっきのそっくり兄弟の1人だ。

人魚は驚いて後退りしたが、すぐに後ろの何かにぶつかってしまう。

「おはようございます」

おそるおそる振り返る。
"後ろの何か"は、そっくり兄弟のもう1人の方だった。
人魚は自分より遥かに背の高い兄弟に挟まれてすっかり怯えていた。

「あはは！ビクビクしちゃって可愛い…」

「こらこら、フロイド…怖がっていますよ」

2人はじりじりと人魚に迫った。
弧を描く口元から、ギザギザの歯が見える。

( 食べられる…！？)

人魚は恐怖で口をパクパクさせていた。

「ジェイド！フロイド！やめなさい！」

兄弟がピタリと動きを止める。
3人は声がした方を一斉に見た。

「騒がしいと思って見に来たら…起きたようですね」

そこには、あの時受け止めてくれた綺麗な少年が腕を組んで立っていた。