〈ツイステ〉海と花束 (ページ29)

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2話ページ29

「…おや、やはりボタンは難しいですか？」

「うん……服って面倒だなあ…」

ジェイドは前が全開きのシャツに手を掛け、
あっという間に全てのボタンをとめてしまった。

「自分でやりたかったのに……」

全て閉じてしまったボタンを虚しい気持ちで
眺めていると、ジェイドがポン、と僕の頭に
手を置いた。

「これは失礼」

全く反省して無さそうな声に
僕は怒った表情で見上げたが、
ジェイドは僕じゃなくてアズールを見下ろしていた。
それも、挑発的な顔で。
アズールもジェイドを睨んでいる。
僕は何が起こってるのかわからなくて
呆けた顔で2人を交互に見ていた。

…なんか2人の間に火花が散って見えるんだけど……？

「あはっ、2人ともオツカレ～」

「ちょっ、わあ…！？」

キョトンとしていると突然自分の体が
宙に浮いた……、かと思ったら
フロイドに抱き上げられていた。
これはきっと陸で言う「お姫様抱っこ」というやつだ。

「よいしょっと」

「っ……！」

乱暴にベッドに放り投げられる。
「いてて…」と腰をさすりながら上体を起こすと
視界一杯にフロイドの顔が映った。

…危ない、
もう少しで顔がぶつかるところだった。

そしてフロイドが自分に覆いかぶさっている
ということに気づく。
覆い被さっている彼に肩を掴まれ、
僕は再びベッドに押し付けられてしまった。

これは一体どういう状況なのだろうか。
おそるおそるフロイドを見上げた。

「あの～……、ふ、フロイド…？」

「さ～、お着替えしましょうねえ…」

目の前の男は
それはそれは楽しそうに口を歪めた。
この顔は…良からぬことをかんがえている顔、
…な気がする。
身の危険を感じて咄嗟に体を強張らせた。

「「フロイド！！！！」」

「わあ」

2人の怒鳴り声と共にフロイドが後ろに
引き剥がされる。
アズールとジェイドはなんだか焦っている様子だ。

「…ほら、早く着替えないと遅刻してしまいますよ」

アズールの一言でやっと思い出した。
さっきの集まりで、
30分後にカフェに集合と言っていた気がする。
……でもそれを言い出した寮長はここにいるのだが。
しかも、部屋を出る様子が全く無い。

3人からの視線を痛い程浴びながら
寮服に着替えることになった。