〈ツイステ〉海と花束 (ページ28)

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『VIP』-1話ページ28

「鍵を」

「え、うん…」

何故か部屋の鍵を求められ、
よく分からないままポケットから鍵を取り出して
アズールに渡した。

ガチャリと部屋の扉が開かれる。

「さあ、どうぞ」

アズールは扉を開いたまま、
僕が先に室内へ入るのを待っていた。
まるで自分の部屋に招き入れるかのように。

なんかアズール変な感じだなあ、と思いながら
部屋に足を踏み入れる。

「わ、…広い！」

寮では狭い部屋を2.3人で共有するものだと思っていた。
そんな想像とは遥かに違うとても広くて豪華な部屋。
部屋の中にも海をモチーフにした装飾が飾られていて
落ち着く雰囲気を出している。
さすが名門校だ。

ふと、ベッドの上に寮服がポンと置かれていることに気付いた。

「これが寮服！僕にも似合うかな…」

上等なスーツに、革靴、ストール、ハット、グローブ。
大人な雰囲気の服装だ。

僕はせっせと式典服を脱いで
新品のワイシャツに腕を通す。
押し広げられた袖は少しヒンヤリとした。

( ボタン苦手なんだよなあ… )

小さいボタンを穴に通す簡単な作業だが、
人魚にとっては難易度が高い。
なんせ、初めて着た服はさっきの式典服なのだ。

もたもたしている僕を見て、
今まで椅子に座って黙っていたアズールが立ち上がった。

「あ～もう、貸してみなさい」

「え、やだよ。自分でやるの！」

「そんなペースで着替えていたら日が暮れてしまう！」

「うるさいなあ、やるったらやるの！」

アズールにぐいっとシャツを引っ張られて、
僕も負けじと引っ張り返す。

バタンッ！

突然扉が勢いよく開かれる。
音に驚いて2人は動きを止めた。

「A～～っ！久しぶり～…… って、ハ？何してんの」

「再会して早々襲うとは…軽蔑します」

そこにはフロイドとジェイドが立っていた。
フロイドはものすごい形相でアズールを睨んでいて、
ジェイドは馬鹿にしたような顔をしている。
「これは違うんです」とアズールが焦って手を離した隙に、
僕は2人に駆け寄った。

「ひさしぶり！！！ 2人とも、相変わらず背高いなあ」

「うわあ、ほんとにAだ」

「お久しぶりです。
A、少し大人っぽくなったんじゃないですか？」

「そ、そうかな…？」

久しぶりに会う双子を見上げた。
海中でも全長がかなりあった彼らは
やはり陸でも背が高い。
海中だったら目線に合わせられるのになあ
と少し残念に思った。