2話 ページ26
話しながら歩いているうちに、トンネルを抜け、寮内へ足を踏み入れた。
寮内の壁もガラス張りになっていて、天井にはクラゲに見立てたシャンデリアがぶらさがっていた。
「おーい、アレン!どこ行ってたんだよ。始まるぞー」
「おう!…A、行こう」
見ると、談話室のような部屋に新入生が集められていた。
その中の1人がアレンを呼ぶ。
アレンは僕の手を引っ張って談話室へ入った。
最前列の方でパン、と手を叩く音がして列は静まり返る。
「新入生の皆さん、改めてご入学おめでとうございます。そして、ようこそオクタヴィネル寮へ」
懐かしい声が聞こえて、僕は急いで前に並ぶ生徒たちの隙間から顔を覗かせた。
そこに立っていたのは、スーツ姿でハットを被ったアズールだった。
「僕が寮長のアズール・アーシェングロットです。困ったことがあればなんなりとご相談ください。全力でサポートさせていただきますので」
久しぶりに見た。アズールの何か企んでる悪い顔。
少し声変わりしていたが、声も姿も全てが懐かしかった。
でも少し、遠い存在になってしまったような気がした。
新入生たちの前に立って話す姿がとても輝いて見えて、まるで別人だった。
もしかしたら僕のことなんか忘れているかもしれない。
突然自信が無くなってフードをさらに深く被る。
「それでは各自部屋で寮服に着替えて、30分後にカフェ『モストロ・ラウンジ』へ集合してください」
整列していた新入生たちがバラバラに部屋を出る。
僕もその波に隠れるようにして談話室を後にした。
部屋へ向かう途中の廊下で突然声をかけられて振り向く。
アレンが手を振りながらこちらに走ってきていた。
まだ式典服のままだった。
「A〜!」
「アレン。どうかした?」
「いや、それはこっちの台詞だよ。…何かあった?落ち込んでたから」
この男は本当に他人の観察が得意のようだ。
アレンの優しさが心に染み渡った。
「もしかして、寮長のことか?」
言い当てられて冷や汗をかいてしまう。
その時。
「そんなところで突っ立って、何をしてるんです?」
噂をすれば。
アズールが腕を組んで廊下に立っていた。
ニコニコと貼り付けられた笑顔に、背筋がゾクリと寒くなる。
「すいません。A、後でな!」
「う、うん…」
アレンはアズールを見るとそそくさと廊下を走って行ってしまった。
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作者名:inucoro | 作成日時:2020年5月27日 3時