〈ツイステ〉海と花束 (ページ24)

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2話ページ24

次はユウの番だった。

前にいる生徒の背が高くてよく見えないので、僕は背伸びをしてなんとか顔を出す。
鏡の前に立っているユウが少し見えた。

「汝の名を告げよ」

「ユウです」

「ユウ…。汝の魂のかたちは……………

―分からぬ」

「なんですって？」

それを聞いて、生徒たちが一斉にざわつきだした。
学園長も食い気味だった。
分からない、なんてそんなことアリなのか。

「この者からは魔力の波長が一切感じられない…。色も形も、一切の無である。よって、どの寮にもふさわしくない！」

ざわつきが一層大きくなる。

先程感じたことが確信に変わった。
やはりユウはこの世界の者では無い。
魔法が存在しない異世界の住人なのだと。

「魔法が使えない人間を黒き馬車が迎えに行くなんてありえない！生徒選定の手違いなどこの100年ただの一度も無かったはず！一体なぜ…」

すっかり1人の世界に入って考え込んでしまっている学園長。
その手の力が緩んだ隙に、グリムが抜け出してしまった。

「だったらその席、オレ様に譲るんだゾ！」

「あっ！待ちなさい！この狸！」

学園長は逃げたグリムに気づくと、声を荒げた。
その声につられて全員が視線を向ける。

「そこのニンゲンと違って、オレ様は魔法が使えるんだゾ！だから代わりにオレ様を学校に入れろ！」

そんな事を言って本当に入学させてもらえると思っているのだろうか。
僕は目の前の茶番を見てため息をついた。

「魔法ならとびっきりのを今見せてやるんだゾ！」

「みんな伏せて！」

危険を察知した誰かが叫ぶ。
その場にいた全員がしゃがみこんだ。

グリムが口から勢いよく吹き出した青い炎は、部屋のあらゆるところに燃え移ってしまった。
もう入学式はパニックだ。

「あちゃー…」

僕は再びため息をついた。

( この騒ぎで僕の印象が薄れてますようにっ、と )

グリムが暴れている光景を見ながら手を合わせて祈った。

あいつは先輩方がどうにかしてくれるだろう。
それに、慣れない足でずっと背伸びをしているのも疲れてしまった。
僕はその場に座りこんで、指先で軽く魔法の練習をしながら暇を潰すことにした。