4話 ページ22
学園長は片手でグリムの首根っこを掴み上げた。
かなり威嚇しているが、見た目が怖くないので効果はない。
「それに、手懐けられていない使い魔の同伴は校則違反ですよ」
「離せ〜!オレ様はこんなヤツの使い魔じゃねぇんだゾ!」
今まで散々追いかけ回してきた迷惑な奴だが、今だけは同意見だった。
こんな乱暴者が僕の使い魔なわけがない!
グリムの言葉に僕たちはうんうんと必死に頷くが、学園長はまだ勘違いを続けているようだ。
「はいはい。反抗的な使い魔はみんなそう言うんです。少し静かにしていましょうね」
「ふがふが!」
乱雑に口が塞がれる。
じたばたと暴れるグリムを気にもせず、学園長は次に僕たちを見た。
そして軽くため息をつく。
「まったく。勝手に扉を開けて出てきてしまった新入生など前代未聞です!はあ……どれだけせっかちさんなんですか」
まったくだ。
あの狸が騒動を起こしていなければ、今頃普通に入学式を受けていたのに。
初日から問題児扱いなんて恥ずかしい。
僕は内心頭を抱えた。
「さあさあ、とっくに入学式は始まっていますよ。鏡の間へ行きましょう」
「……ユウ?行かないの?」
大人しく学園長についていこうとするが、何故かユウはキョトンと呆けたままその場に立ち尽くしていた。
「その前に、ここは一体どこですか?」
ユウにはふざけている様子など一切無かった。
僕はその時「ユウは別の世界から来たのではないか」と思った。
それくらい、この世界のことをまったく知らないのだ。
「おや?君、まだ意識がはっきりしてないんですか?空間転移魔法の影響で記憶が混乱しているんですかねぇ……」
学園長は首を傾げながらユウを眺めていた。
なるほど、空間転移魔法をかけられていたのか。
だとすれば、僕があの時呪文を思い出せなかったのはその魔法のせいだったんだろう。
自分の頭が悪かったからでは無かったのだと知って胸を撫で下ろした。
「まぁいいでしょう、よくあることです。では、歩きながら説明してさしあげます。私、優しいので」
最後のは自分で言っていいやつなのか。
学園長は不気味なほどにニッコリと笑っていた。
そうして僕たちは図書室を後にした。
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作者名:inucoro | 作成日時:2020年5月27日 3時