〈ツイステ〉海と花束 (ページ19)

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『エスケープ！』-1話ページ19

時間は、思っているよりも速く過ぎてしまう。
あっという間に 2度目の春が訪れる。

暗転。

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深海よりもずっとずっと真っ黒な空間。
体は眠っているはずなのに何故か意識はあって、不思議な感じだ。

…あれ、僕何してたんだっけ？
黒き馬車が迎えにきて、棺の中に入って…そしたら眠くなって…。

「…？」

そういえば、さっきから何かにおいがする。
あまり嗅いだことの無い嫌なにおい…。
しかもなんだか身体が熱くなってきたような…―。

その瞬間、嫌なにおいの正体がわかった。

何かが燃えている。
燃えているのは………… 僕の棺だ…！

急いで棺の蓋を蹴り開けようとするがビクともしない。
何か魔法を使おうと、呪文を頭に浮かべようとするがパニックになって何も浮かばなかった。

「どうしようっ…」

入学前に焼け死ぬなんて嫌だ……！
やっと3人に会えるのに……！

ふと、棺の向こうで声がするのに気づいた。
助けに来てくれたんだろうか。
棺の蓋に耳をあてて様子を伺う。

「や、やべーんだゾ！間違えてこっちの棺も燃やしちゃったんだゾ！火を消す魔法～…火を消す魔法～…！」

「そこに誰かいるんですか！？」

「ふな゛っ！？」

咄嗟に声をかけると、突然青い炎が視界一杯に広がる。
同時に棺の蓋が勢いよく開かれた。

炎から逃れるべく棺から飛び出して着地する。
が、まだ二本足に慣れていないのでバランスを崩して少々不格好になってしまった。

見渡すと、自分が入っていたものと同じ棺がたくさん浮いている。
そして至る所に施されている華美な装飾。
ここが「ナイトレイブンカレッジ」。
やっとここまで来たんだ…！

感動していると、横から先程と同じ声がした。

「ふな゛～～！やっぱりコイツも起きてるんだゾ～！？おいオマエ！急に声かけるからビックリして手元が狂っちゃったんだゾ！」

そこに居たのは、目の青い、灰色の毛並みをした小動物。
「陸の生き物図鑑」では見たことのない生き物だが、少しあの動物に似ている…。

「「喋る狸？」」

「誰が狸じゃーーー！しかも2人同時に言うな！オレ様はグリム様なんだゾ！」

"2人同時"？
たしかに誰かと声が重なったような気が…。

不思議に思って横を見ると、黒髪の少年が立っていた。
自分と同じくキョトンと呆けた顔をしている。
気まずい空気が流れて、2人はなんとなくぺこりと頭を下げて会釈した。