イントロ。

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「・・・」


「返事、返ってけえへんて事は、
ええって事な」


「何それ。亮、勝手なんだから」


「俺はいつもわがままや。
知ってるやろ？」


Aが一人が好きなんて、
感じた事ない。

強いように見えて、
俺とどっこいどっこいの寂しがりやん。

ほんまは、誰より、
繊細で、傷つきやすい。

優しいから・・・


照れるし、よう言わんけど。


「じゃ、保留ね。
亮の誕生日まで」


「おしっ。
約束やで？」


「ん、女に二言はない」


「さすが、俺の嫁さん」


たったの２週間で、
惚れ直させる事、出来るかな。

いや、絶対にもういっぺん、振り向かせる。


今度こそ、ええ旦那になろう。


「A、おやすみのキスしてもええ？」


「離婚の話し合いの保留中なのに、
それはありなの？」


「今、この瞬間は夫婦やろ？」


「ま、そうだけど・・・」


俺の事、何が何でも嫌ってわけではなさそうや。


レベル低い話やけど、
生理的に無理とかなったら、
挽回難しいやろうから、
ほっとしてる。


「Aも、なんか、俺にお願い事してもええで？」


「いいの？」


「なんかあるん？」


「じゃあ・・・
あの絵本、読んで。
亮に読んで欲しい」


「そんな事でええん？
お安い御用や」


大切な一冊は、
リビングの本棚から、
この部屋に持って来てる。


ベッドサイドの照明をつけて、
うつ伏せになって、絵本を広げた。


懐かしい、あったかい絵柄。

主人公のクマのたあ君は、
甘えん坊の、
いたずらっ子。

優しいママとパパが、大好き。


絵本を声に出して読むって、初めてかもしらん。

しかも、大人のAのためにって。


冷静に見たら、
なかなかにシュールやろな。


「クマの子、たあくん。
はじまり、はじまり」


ちょっとそれっぽい雰囲気で始めたら、
Aがパチパチって拍手くれる。

余計に照れるけど・・・


「たあ君は今日もお寝坊さん。
ママが優しく呼んでも、
パパがゆらゆら揺らしても起きません。
今日はパンケーキを焼きましょう、
と、ママは言いました。
パンケーキ！パンケーキ！
食いしん坊のくまのこ、たあ君は大喜びです。
さっそく、張り切って、
まぜまぜのお手伝いを始めましたが・・・」

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