【氷と炎】⑭数原龍友 (ページ44)

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「あーあ、もう。こない油断して」

聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声で呟いて、"え？"なんて反応するAのウエストをホールドする。

「え、ちょ……待って！」

ビックリして僕から離れようともがき出す前に、小さな体を強引にお湯の中に引きずり込んだ。

白い色のお湯が派手な音を立てて水しぶきを上げ、Aは頭から突っ込まされてずぶ濡れ状態。

思わず声を上げて笑う僕に"なにするの！"なんて怒ってる彼女。

「油断してる方が悪いねん」

「油断もなにも、体洗ってただけでしょ！」

僕に抱きしめられたまま、濡れた髪をかき上げる仕草を見せるAはメチャメチャ怒ってるけど

しばらくすると諦めたように笑った。

「あーあ、もう。

　下着まで濡れちゃったじゃん！」

「貸したろか？僕の」

「遠慮しときますー」

そんな事を言って笑うAの背中に腕を回して、少し上から僕を見下ろす体制のAに問いかけた。

「なぁA」

敢えて呼び捨てで。

「ん？」

濡れた髪の隙間から綺麗な目で僕を見る。

「いつ僕の事思い出してくれるん？」

ほんの一瞬、この場が静まり返ったような気がした。

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