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◇
「いや、大丈夫です……」
少し緊張したようなAの声に、あかんやってもうたって反省するけど
久し振りに触れたAに心臓がぎゅって締め付けられる感じ。
お預け喰らっとるからとかそういうんやなくて
なんやろ、もどかしいっていうか物足りひんっていうか。
切なくなるというか……。
「そろそろ帰るわ。
またファイナル後に」
そう言って立ち上がる僕に続いてAも立ち上がる。
せやけど返事もなく僕の後ろをついてくるAが気になって足を止めた。
「どないしてん」
振り返った先ではいつものAっぽい表情。
「え？どうもしないけど……」
そんな風にあっさりした返事を返してくる。
他の誰にも分らんと思うけど、僕にはわかるで。
なんとなく、寂しいっていう空気。
「寝付くまで傍にいたろか？」
なんもせぇへんし、寂しいんやろ？って言えばびっくりした顔。
「別にそういうわけじゃないけど」
強がるAの方に一歩踏み出して
ゆっくり両手を広げる。
「抱きしめてもええ？」
その答えを聞く前に、腕の中にAを閉じ込めた。
・
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作者名：Rui
| 作成日時：2021年1月5日 23時
