[Voice]22登坂広臣

広臣side ページ2

※



直人さんが何もわからず画面をのぞき込む。



まだ全然酒が残っている彼はフラフラしながら笑ったりなんかしてて。



しばらく俺の部屋が映るその画面に"なにこれー"なんて興味ない言葉を言っていたけど



次にそこに映し出されたAの姿に驚きの声を上げた。



「え？銀さん！？」



まるで飛びつくような勢いで、酒の一瞬抜けたんじゃないかって感じ。



「あのライブの日の、Aが出ていく直前に撮られたものっぽいです」



そう言った俺の言葉なんて耳に入ってないようで、食い入るようにこの動画を見つめていた。



直人さんにとっても久しぶりに見るAの姿。



柔らかいこの声が耳に心地いいけれど、俺は何度も繰り返し見ているだけにこれからAの隠していた全てが暴かれるのと



途中痛みに苦しむ姿もあるから、これが何度目の再生だったとしてもその場面を見るのはつらい。



「病気の事……話してくれたんだね」



打ち明けたその話の内容を直人さんの中でもゆっくりゆっくり消化していっている。



もう何年も前に撮られた動画なのに、ここに映るAの姿と言葉はあまりに新鮮で



俺達から言葉を取り上げた。




・

広臣side→←広臣side

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す