[axis]⑪登坂広臣 (ページ10)

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広臣side ページ10

※

「役にたった？」

受け取って自分の指にそれを戻せば、頷くAの両手全ての指が寂しい事に気が付く。

そういえば、あんまアクセサリーをつけてるのを見たことがない。

指輪にしてもネックレスにしてもピアスにしても。

嫌いなんかな？

ネイルもナチュラルのままだし…着飾るタイプじゃねぇ…のか？

なんとなく気になったそれは今は特に聞く事じゃねーと思って言葉にしないけど、何となく頭の中にそれが記憶された。

「就任会見は当然の事なんだけど…昨日大輔が言ってた臨時株主総会の事が気になる。

　おそらく辞任を求めてくると思うんだけど…その後が全く読めない。誰を指名してくるのか…それが大輔以外だったら困る」

残る候補は大輔なのに、全く別の人間を指名されたらもう大輔が総裁になるのは難しい。

そう言ってAは綺麗な指でこめかみを押さえた。

「なんで？まだ大輔さんも臨時株主総会を開けばいいんじゃねーの？」

「開けるけど、その時の総裁に問題がないなら辞任は請求できない。

　問題がある場合のみに適用される。正確には請求そのものはできるけど、異議申し立てされて元鞘になるだけの事」

って事は、その総裁がきっちり勤め上げる事を考えると

もう代替わりして私達の代からは候補者は出ない事になる。

Aの言葉が重く沈んでいくように吐き出された。

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