[axis]⑪登坂広臣 (ページ48)

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広臣side ページ48

※

「私は武の考えてる事がわからない。

　私を会長に指名してどうするつもり？」

「僕は大輔さんの考えがわからない。バカはフリって本当？」

自分の中にある疑問を言葉にして伝えていく2人に対して

大輔さんは違った言葉を口にした。

それはずっと彼が心の中に思い留めていた事。

「俺はね

　お前たち2人をこの世界から遠ざけたい。

　普通に社会経験をして普通に結婚して、普通に幸せになって…

　普通に天寿を全うして欲しい」

何度も"普通"を連呼する大輔さんは、2人を交互に見て更に言葉を続ける。

その姿を見ているだけの俺の目には愛情深い人っていう印象が生まれた。

「死ぬ時も死んでからも注目されるなんて、ただの見世物じゃん。

　正直、お前たちが日銀から離れられるなら俺は総裁にも会長にもなる気はない。

　最初から俺の目的は

　お前たち2人をこの世界から引き離す事だから」

そう言って訪れた沈黙の中からは、さっきまであった緊張感が消えてなくなっていた。

変わりに存在するのは

大輔さんの2人に向けられた愛情と

それを受取ろうと必死になる武。

あと。

「なんで大輔1人がそんな風に頑張らないといけないわけ？」

困惑したAがいた。

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