広臣side ページ28
※
「とりあえず、今はここに座っとけ。
んでスタジオに入ったらマネージャーさんの傍についてろ」
支度に入る俺が武に指示を出せば、素直に返事をして俺が指さしたパイプ椅子に腰かけた。
そのまま物珍し気にあたりを見渡している。
メンバーそれぞれがメイクして衣装を着て、段取りの確認や振りの確認。
隆二に限っては○○声量で音程の確認。
さすがにそれにはびっくりしてたけど、隆二が歌うと興味があるようでジッとその歌う姿を見つめていた。
歌に興味があんのか、この声に興味があんのか…
隆二に興味があるのか。
「登坂さんもこんな風に歌を歌えるの？」
答えは歌だった。
まあ隆二に興味があるって言われたらちょっと困ったけどね。
「そりゃ歌えるよ。
俺と一緒にボーカルオーディション勝ち上がったんだから」
会話を聞いていた隆二に言われて武の目が輝いた。
それはまあこういう事だろう。
「歌って！」
「え？今？ここで？」
言われるだろうと身構えていたけど、こうも無邪気に言われるとちょっと困る。
しかも今顔半分メイク途中。
「あの歌、歌ってよ。
三代目の歌なんでしょ？」
「どの歌？」
はしゃぐ武に声を掛けたのは隆二で。
無邪気な少年の瞳が隆二を捕らえてより一層輝いた。
"歌ってくれるの？"っていう期待で輝いて、リクエストされた曲は。
「PRIDE」
「え？」
驚いて、ほんの少しだけ時間が止まった。
・
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作者名：Rui
| 作成日時：2017年7月4日 21時
