[axis]⑦登坂広臣 (ページ45)

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広臣side ページ45

※

「昔はよく飲んだじゃん」

「昔はね」

缶ビールを開けながら2人の様子を伺う俺に、武の視線がこっちを向いた。

「おにーさんは、Aのカレシ？」

すげぇ無邪気に悪気なく聞かれてるだろう言葉に

肯定してやろうとして先に否定の言葉が横からやってくる。

「違う」

「あ"あ"！？」

Aの短い言葉に瞬間的に被せるように唸った俺。

びっくりして俺を見るAと爆笑してる武。

つーか、何否定してんの？この子。

しかも少しも戸惑う事なく光の速さで。

確かに付き合ってはねーけどさ…もう少しこう恥じらうようなもったいぶるようなそんな雰囲気出してもよくね？

缶ビールを咥えこんで隙間から思い切り睨めば、戸惑うAの視線とぶつかった。

「え…だって…付き合ってないじゃん」

そうでしょ？ね？なんて言わんばかりの言い草に、俺の怒りは増していく。

「んじゃもう、背中貸してやんねー」

冷たく言い放てば、また"野村に借りる"なんて言うかなって思うけど

少しはAの中で気持ちは前に進んでいる…

らしい。

「それはヤダ」

誰かを比較に出してくる事がなくなった。

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