[axis]⑦登坂広臣 (ページ12)

今日:10 hit、昨日:16 hit、合計:542,720 hit

広臣side ページ12

※

この子は一体･･･。

ジッと見つけて考え込む俺に、救いの言葉が向けられる。

「逃がしてあげようか？」

「え？」

「でも、出られるのは明日の朝になるけどね」

そう言うと、この子は立ち上がった。

「セコムもくるし、オニーサン捕まったら世の中大変なことになるでしょ？

　仮にも芸能人だし、日銀に不法侵入なんてテレビ界追放じゃすまないかもしれないし、メンバーも芸能界で仕事がもらえなくなるかもよ？」

そう言ってる言葉は脅しとかじゃなく、誰もが簡単に予想できるもの。

しかもこの子は、だからこそ俺を逃がしてくれるという。

なんでだろう。

さっきの事といい･･･今俺を逃がしてくれることといい

どこか薄気味悪くクスクス笑うこの子の表情は、暗闇の中でわずかにしか見えないけれど

中世的で、人間ともゴーストとも取れるような儚く消え入りそうな存在感。

一瞬でも目を離せば、煙のように消えていくような気もした･･･。

「･･･君は味方？」

質問を変えた俺に、薄い唇がゆっくりとつり上がる。

暗闇の中で見るその表情は、俺の本能が警報を鳴らした。

この子は正気の沙汰じゃないと･･･。

「加藤武、16歳。

　日銀の

　･･････第三後継者だよ」

まるで仮面をつけたピエロのような笑い声を上げながら

少年がそう言った。

・