[axis]⑤登坂広臣 (ページ7)

今日:10 hit、昨日:7 hit、合計:308,541 hit

広臣side ページ7

※

寝室に置いていた荷物を持たせて、玄関へ。

次

いつ会えるんだろう…そんな風に思いながら靴を履くAの背中を見つめた。

その背中がゆっくりと話し出すから静かに耳を傾けると微かに震えてる気もする。

「とりあえず、しっかりとした証拠が掴めるまで日銀にいる。

　全部の証拠が揃ったら…またここに逃げてきてもいい？」

顔を上げて俺を見ながら言うAに答えは"もちろん"で。

「迎えにいってやるよ」

なってかっこつけてみる。

それには笑顔をくれるAがまた少しだけ寂しそうな顔をして、大きな目を伏せた。

「臣」

「ん？」

急いで帰んなきゃなんねーのに、なかなか出ていこうとしないA。

俺を呼ぶから返事を返せば"もう一回背中、貸してくれる？"なんて言う。

「背中でいいの？」

「…背中がいい」

後ろを向けば、またそこにくっついてくるA。

寂しいってのよりは、向こうに戻る事がつらいんだろうと理解した。

いくら目的があるとはいえ、あの親元にいるのはつらいとしか言いようがないし

俺からしたら、またあそこに居るとなると再び洗脳される日が来るんじゃないかと心配にもなる。

なるべく早く…言いたい所だけど、それはAを追い詰める言葉だと分かってるから言えなかった。

「俺に出来る事なら何でも言って」

細い腕をなぞり、俺のシャツを握りしめる手を包み込んだ。

・