[axis]⑤登坂広臣 (ページ6)

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広臣side ページ6

※

恐る恐る背中に触れる小さな手。

頬を寄せてぎゅうっとしがみ付いて。

両手を腹ん所に回してシャツを握りしめるから、その小さな手の上に俺の掌を重ねた…。

「なに？甘えてんの？」

聞けば、頷く気配が背中に伝わった。

俺の掌の中の小さな手がすげぇきつくシャツを握りしめるから、もしかして泣いてる？なんて心配にもなる。

「泣いてる？」

「…泣いてない」

鼻水すする声で言われた(笑)

「大丈夫だよ、俺がいっから」

いざとなったら俺が一緒に逃亡してやるし。

そう言うとAは小さく笑って。

シャツを握りしめていた片手をゆっくり開いた。

「これ…預かってて」

俺の掌の中で開いた小さな手。

そこにマイクロSDがある。

「今までの証拠が全部これに入ってる。

　お願い、これ臣に持っててほしい」

「わかった。誰にも知られないように隠しとく」

そのSDを受け取って、しっかりと握りしめた。

同時に"ありがとう"と囁かれて

まあ、運命共同体だし？なんておどけて見せれば笑う感触。

少しでもいいから笑って欲しいって思って言った言葉に反応をくれただけで嬉しくもなる。

でも、密会は長いと意味がない。

短時間で済ますもの。

小さな笑い声の中に、"もう行かなくちゃ"って言うセリフ。

引き留めたい気持ちにブレーキをかけて、背中にある温もりが離れていく寂しさを実感した。

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