[axis]⑤登坂広臣 (ページ38)

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広臣side ページ38

※

「お前がどれだけAを好きになっても

　Aが死ぬほどお前を好きになっても、婚約者は俺だから。結婚できる権利は俺にしかない」

攻撃的な言葉にいくつもの棘を見つけて聞いてるだけで嫌になるけど

やっぱりこの人、恋愛感情でAを好きなんじゃないかと思う。

依存症の人みたいに自分の物を盗られた感よりも、嫉妬の感情の方が強い気がする。

独占欲のような意固地のような俺の物っていう発言をしないのがその証拠。

「婚約破棄ってのが世の中にはあるんすけどね」

「破棄なんてさせないよ。できないほどの条件を出して絶対に手放さない」

俺達の会話で目を覚ましたA。

野村さんがいることに驚きながらも、ここに流れる空気が不穏そのものなのに気が付いて口を閉ざした。

そのAを腕の中に捉えたまま起き上がり、野村さんを見れば

相手もまっすぐに俺を見て宣言する。

「お前を訴える。

　人の婚約者に手を出したって事で慰謝料請求、メディア公表」

「は？ちょ…野村！？」

驚くAが俺達の間に入り込もうとするけれど、それは俺が阻止して黙らせる。

それをいい事に野村さんは言葉を続けた。

「Aが今すぐに俺と結婚するなら、何も手出ししない」

そう言って判断をAに任せたこれは完全に

脅し。

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