[axis]⑤登坂広臣 (ページ36)

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広臣side ページ36

※

「じゃあこんなとこに来てないで、その子のところに行ってやりまくればいいんじゃないの？」

大きな欠伸をしてまた目を閉じたA。

全然嫉妬してる気配も様子もなければムカつくぐらいにいつもと同じ。

で結局、俺が負けっていうね。

自分が掛けたカマに少なくとも俺にあった気持ちが離れていくんじゃないかと気になって

小さく丸こまるAに"背中貸してやろうか？"って声を掛けたのに。

「いい。野村に借りるから」

なんて…こいつのが一枚上手。

あっさりと俺が嫉妬するワードを口にするあたり、確信犯なんじゃないかとも思うけど

チラッと伺った先でAは気持ちよさそうに目を閉じてるから素で言ってるっぽい。

「ムカつく」

「なんで？」

瞬時に返ってくる言葉に苛立ちより焦りが芽生えた。

でも包まった布団の中から細い指がちょこっと顔を出して向こうを指さして。

「向こう向いて…」

甘える前のおねだりをする。

ちょっとイジワルして拒んでやろうかとも思うけど、そうできない気持ちの方が大きくてAに背中を向けてベッドに横になった。

すぐにくっついてくる柔らかに温もりに、ほんのちょっと幸福感。

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