[axis]⑤登坂広臣 (ページ28)

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広臣side ページ28

※

「はい、もー寝る。

　部屋は？」

Aの背中を押すようにして促せば、リビングを出て玄関前を通り

今までいた場所と反対側、いくつか扉があるその一番奥で止まった。

「ここだけど」

そう言ってドアを開けた中には書斎のようなデスクと、でっかいベッドとテレビがあるシンプルな男の一人暮らしみてーな部屋が広がっている。

デスクの上はノートパソコンにたくさんの書類。

難しそうな本が無雑作に置かれてて。

「もうちょっとこう…ぬいぐるみを置けとは言わないけど、女の子らしい部屋にはなんなかったわけ？」

ちょっと隆二んちに近いもんあるわ。

なんとなく言った言葉に返ってきたのは。

「だってそういうものに興味を持つ事許されてないから」

それだけ言って、Aは部屋の中に入っていった。

その背中が怒ってるわけじゃないけどなんっか寂しそうで、いらん事言ったって自覚する。

だからってごめん…なんて言うのも傷を抉るパターン。

俺も部屋の中に足を踏み入れて、後ろ手に扉を閉める。

小さくパタンと音を立てたのを聞いたAが俺を振り返り、この中に自分以外の人間が存在することに不思議な顔をしてみせた。

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