[axis]⑤登坂広臣 (ページ24)

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広臣side ページ24

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このままキッチンでグラスにワインを注いで乾杯。

アイランドキッチンのテーブルに手をつきながら、大きな窓の向こうに広がる夜景をぼんやりと見つめる。

言葉がないのはたぶん、Aが疲れているから…。

「…なんで来てくれたの？」

ワインを口に運びながら聞いてくるAに、そりゃね…って。

言いたいけど黙っとく。

確信はまだ触れたらそれだけこいつを悩ませるから。

「会いに来たらダメだった？」

「ダメじゃない」

「そ。」

短く言葉を交わしてまた沈黙。

でもグラスにつけるAの唇がほんの少し嬉しそうなのが見えた。

"来てくれて嬉しい"ぐらい言えっての。

グラスとボトルを持ってリビングに移動して、また並んで座る。

ただでさえ広い空間で、こんな風に寄り添ってるとか…まあ特別感は感じるよね。

「Aさ、明日の予定は？」

「あー…確か昼から会議だった気がする。それぐらいかな」

「俺も夕方から仕事。

　泊まってってい？」

別になにかするってわけじゃねーけど。

俺が傍に居てやった方がいいんじゃないかって思うのは言い訳で、本当は俺がこいつの傍に居たいだけ。

返ってきた返事は、"いいよ"だった。

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