[axis]⑤登坂広臣 (ページ21)

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広臣side ページ21

※

「はぁ！？」

間の抜けたAの声。

なにそれ、って言いながら大きなため息。

「そんなの私に聞けばいい話じゃん。なんで臣のとこにいちいち行くわけ？」

「聞いたら答えてくれんの？」

「私が答えなかった事なんてないでしょ」

2人のやり取りを見てるだけの俺は静かな口喧嘩を目線で追いながら様子を伺った。

「私と野村は共依存なんだよ。あの親から離れて自分の置かれてる環境と自分が普通と違う事に気が付いた。

　お互い親に押さえつけられて、決められた道を進んできて、その中で助けを求めて縋るようにお互いに寄り添ったけど、それって愛情じゃない、依存。

　私が臣に持った感情に気が付いて、それが野村に対するものと全然違う事にも気が付いただけ」

「………」

ん？

今…なんて？

Aが言い切った後には静寂があって。

野村さんを見ればどことなく納得したような感じでAを伺い見れば"わかった？"とでも言いたげに野村さんを見てる。

……今、俺に対する感情は野村さんに対するそれと違うって

言ったよね？この人、しかも自分で。

重苦しいほどの沈黙の中で、俺の時間だけが止まったような錯覚が起きた。

でも、問い質せない状況なんだけどね。

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