広臣side ページ30
※
「なんなのもう！更年期か！お前は！」
俺に引きずられるAの暴言をスルーしつつ、とりあえずまた部屋に戻るけど
薄暗い部屋の中でAの周りだけ赤く燃えているように見えるのはかなり苛立ってるから。
俺の苛立ちよりも遥かにでかいその感情に、何をどう言ったらいいかわかんなくて。
「寝るぞ」
そう言ってベッドに入れば。
「寝れば」
攻撃的な言葉が返ってくる。
「お前も寝るんだよ」
若干不貞腐れ気味に言いながらも、ベッドを半分あけてやる。
また隆二んとこにでも走るかと思えば、ここは素直に従ってくるのがまた謎。
まあAからしたら俺の方こそだいぶ謎。
もそもそと仏頂面でベッドに上がってきたら、俺の方に背中を向けて丸まった。
なにこれ、抵抗してんの？
目の前の小さな背中にそんな苛立ちを覚えると、向こうを向いたままのAの腕が伸びてきて俺の手を掴んだ。
「こうしてて」
そう言って、今度は俺の腕がAの腹んとこに持ってかれる。
さっきと逆の体制。
ほんの少しある俺とAの隙間だけど、小さな背中が俺に近づいてきてぴったりとくっついた。
「マジでなんなの？お前」
「臣こそなんなの？」
疑問を疑問で返されて、でもそれ以上の言葉はなくて。
胸元に感じる小さな鼓動にゆっくりと眠気が襲ってくる。
同時に腕の中でも小さな体から力が抜けていくのがわかった。
「ごめん」
お互いが夢の中に堕ちる時、一言だけ呟いた。
これがいつか、好きって言葉に変わればいいけどな…なんて思いながら。
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作者名：Rui
| 作成日時：2017年5月25日 14時
