[axis]②登坂広臣 (ページ31)

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広臣side ページ31

※

「登坂さん」

「は？」

急に俺を苗字でさん付けで呼んだA。

この前まで"ゼロ"なんて呼んでいたのに急に苗字とか。

「やめろ！びっくりすんだろ！」

今度はこの言葉を俺が言ったよね。

だって気持ち悪いじゃん、こいつにさん付けで呼ばれるとか。

「え？じゃあ何て呼べばいいの？広臣さん？…ヤダキモイ…」

「お前ね…」

何自分で言ってキモイって。

失礼だろーが。

「臣でいいよ。皆そう呼ぶし」

「…あ、そう。じゃあ、臣」

改まって俺を呼んだA。

急に何を言い出すのかと思えば、めっちゃ笑顔で俺を見た。

「ありがとう！びっくりするほど簡単な事だった」

そう言うと、携帯を取り出してどこかに電話をかけ始める。

繋がった先に名乗らないのは、それだけ親しい人だからって言うのとまあ携帯だからね。

向こうに名前が表示されてるだろうし。

でもだからって、これはないよね。

「ごめん、私もう嫌になったから。

　明日の遺言書の公開も行かない。もうやめる。

　全部やめるから」

きっと向こうからしたら突拍子もない事この上ないはずで、傍で聞いてる俺もソファーから落ちそうになる。

「もう少しちゃんと説明したら？」

聞こえないように助言した俺の目の前で

携帯の向こうで何やら叫ぶ男の人の声を聞きながらAは携帯の電源を落とした。

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