[axis]②登坂広臣 (ページ30)

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広臣side ページ30

※

小さく投げやりになるような言葉にどう返事を返したらいいのかわからなかった。

部外者の俺が簡単に慰めのような言葉を言っていいものかわかんねーし

余計な言葉って人を傷つけるから黙っているのが得策のようにも思えたけど…でも何か一つぐらい言葉を向けたかった。

それなのに、出てきた言葉があまり優しいもんじゃない…。

「なんでその世界で生きてるの？嫌ならやめればいいじゃん。

　ずっとそこにいるのはなんで？」

言葉を向けるというよりは質問をAに向けると

覇気のない目元が見開かれる。

怒らせたかと思ったその言葉だけど、予想外にAにとって状況を好転させるものだったらしい。

「…確かに」

そう言うと小さな体を起き上がらせて、しっかりした顔つきで俺を見る。

なんていうか、頭の中の霧が晴れて少しすっきりしたような感じにも見えた。

「なんで今まで気が付かなかったんだろ。

　そういうの洗脳とでもいうのかな」

目が覚めたというような、すがすがしい顔をしてにっこりと笑うA。

「さっさと逃げればよかったんだよね、私。

　なんで嫌だって言いながらずっとあの場にいたんだろう、バカバカしい」

それこそ今本人が言ったかのように洗脳が解けたような感じで

閃いたと言わんばかりに立ち上がった。

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