[doll]⑯登坂広臣 (ページ34)

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広臣side ページ34

※

腕の中にすっぽり入り込んでくる何か。

俺の名前を呼ぶ声と、受け止めたこの感触を俺は知っている…。

「は……？え？…A…？」

目の前で閉まっていく自動ドアの向こうで、黒い服を着た怖そうな人がこちらを見てじっと立ち尽くしていた…。

突然の事で俺の頭が働かない。

一体なんでここにAがいるのか

本当にこの腕の中の人がAなのか、この現実が信じられなくて。

でも背中に回された小さな手が俺のシャツをぎゅっと握るその仕草に"Aだ"と確信する。

「な…んでここにいるの？」

抱きしめ返すことを忘れてる俺の言葉に、久しぶりに聞くAの声は相変わらず

泣き声…。

いやいや、ドイツ行きはお前が自分で決めた事でしょーよ。

若干苦笑いの俺がようやく腕の中にAを閉じ込めれば

ガバッと顔を上げるA。

涙でぐしゃぐしゃな顔で俺を見上げて"ごめんなさい"と連発中。

何に謝ってんのかわかんねーし

俺から言わせれば謝ってもらう事山ほどあるし(笑)

なのに急に俺から離れようとじたばたするし

「あーもう！！」

逃げようとするAをとっ捕まえて強制連行。

第一、逃げようとするとか何。

お前が自分でここに来たんだろーが。

少し痩せた？感じの細い腕を掴んで、強引に部屋の中に連れ込んだ。

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