[doll]⑯登坂広臣 (ページ14)

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広臣side ページ14

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夏を楽しみにした日からあっという間にまた時間が流れていく。

あの日気持ちに蓋をしないようにしてからだいぶ自分が落ち着いたように思えた。

それに、自分の中でAの存在が静かに薄くなっていっている。

たぶん、これが時間薬ってヤツなのかもしれない。

そして季節は夏を過ぎてもう秋。

皆で楽しみにしていた夏休み的なものは、それぞれが別日にたった１日の休みを取るのも必死だったマネージャーさんを非常に困らせただけで終わった。

「海行けなかったじゃん！」

用意していた浮き輪を楽屋で膨らませ始める直人さん。

そこにマジックでSEVENって書いちゃうあたりもうやけになってると思う。

「SEVENブランドの浮き輪やん」

なんてつっこっむ健ちゃんもシュノーケルつけてるしね。

うん、ここ楽屋(笑)

「あー、皆で海行きたかったなー」

海パン一丁で椅子に座る隆二がマネージャーさんをチラッチラ見ながら言うもんだから

もうマネージャーさんも苦笑い。

「無理言うなってー。この7人をいっぺんに一週間休ませるって、どう考えても今は無理でしょ。

　どれだけ売れてるか自覚ある？あの新曲以来、スケジュール何ヶ月先まで埋まってると思ってるの？」

そう言ってヒラヒラさせた手帳は真っ黒すぎて何が書いてあるのか全然わかんない。

「特に臣ちゃん。アナタが一番忙しいンデスヨ」

びしっとボールペンで指さされて、肩をすくめて見せるけど

でもやっぱ

「海行きたかったぁぁぁぁ」

そう叫んだ俺も、実はイルカの浮き輪に跨っていたりしてね。

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