[doll]⑯登坂広臣 (ページ11)

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広臣side ページ11

※

「無理に忘れようとするから苦しいんですよ。

　自分に嘘つかないで、思う通りに気持ちを吐き出していけばいいんです」

見かけによらずしっかりした事を話すかなちゃんも意外だけど

ここまで泣き言を人に話した自分も意外だと我ながら思った。

でも、

「ありがと。すげぇ気持ちが楽になったわ」

かなちゃんの言う通り、無理に自分の中に存在するAに蓋をすることをやめた。

いつか時間が解決してくれると思って、強がるふりもしないことにする。

「かなちゃんは、好きな人いるの？」

そう聞いた俺に、かなちゃんが少し動揺を見せるから

まあ答えを聞かなくてもわかるけど、やっぱりこの子素直。

変な隠し事をしないで正直に話してくれた。

「お気を悪くされるかもしれないですけど…実は登坂さんの事が好きでした。

　でも…入り込める隙間はないんだなってわかりました」

ほんの少しだけ悲し気に笑うかなちゃんに、あーやっぱりなって思うのと

ここで変に気を持たせる返事なんてできない俺は、ちゃんとその言葉に誠意を見せる。

「俺Aが好きだから。

　あいつしか見えてない」

教えてくれたのはかなちゃんだけどね。

そう言葉にして…少しの沈黙のあとお互いほんの少しだけ笑いあった。

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