[doll]⑮登坂広臣 (ページ10)

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広臣side ページ10

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「お前…、何言ってんの！？」

俺より先に驚いた声を上げたのはシンさん。

今初めて聞いたようで、あのシンさんが動揺を隠しきれていない。

当然それは俺もで、どう言葉を向けていいか全くわからなかった。

「誰にも言ってなかったけど、しばらく海外に行こうと思ってる」

そう言って、ようやく俺に向けられた瞳は揺れる事なくまっすぐにその意志を伝えてきてくれた。

「臣の事は大好き。

　たぶん、一生をかけて大好き…、でも、その好きを上回る恐怖が私の中にある…。

　それからもう解放されたい」

泣き虫なAが泣かずにいる事がもうすべての答えなんだと思う。

それはわかる。

でも、"わかった、行ってらっしゃい"なんて

そんな言葉を軽く言える器は当然持ち合わせていない。

「もっと言うタイミングがあんだろーが！」

さっきの事を見ていたんだから、口を挟む事だってできたはずだとシンさんは言うけれど

でも、Aの事だからなかなか言い出せなかったのも、わかってやれるのは俺だけ。

それがわかるだけに自分が今すげぇシンドイ…。

「聞いてんのかよ！」

返事をしないAに声を荒げたシンさん。

俺の事を考えて言ってくれてんだろーなってのがすげぇ嬉しいけど。

「すいません、この話はAと俺だけでさせてください」

そう言って、隆二の家より先に俺の家に着けてもらった…。

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