[doll]⑮登坂広臣 (ページ6)

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広臣side ページ6

※

「あの男の両親も殺人幇助の罪で逮捕済みだ」

親父さんの手の中でやたらと小さく見えるお猪口が空になってるのを見て。

傍にあった徳利を手にした。

「…何も知らなくて…なんもできなくて、すいませんでした」

きっとこういう時のこの言葉って、受け取る側からしたら正直いらないものなのかもしれない。

同じ場所にいたわけじゃないんだから知らなくて当然だし、何もできないのも当たり前。

でも、この件に関してはどんな細かい事でもAとすべてを共存したいから。

受け取ってもらうべくして伝えた言葉の後に、お猪口にお酒を注いだ…。

それからもう一つ言いたい事。

「これからは、俺にAさんを守らせてください」

意識していたわけじゃないし

結婚の挨拶なんて思っても見なかったけど、自然と言葉が口をついて出ていくから

今がこの言葉を伝えるべきなんだなって直感がそう言ってる。

「Aさんと、結婚させてください」

手にしていた徳利を置いて、親父さんに向き直り頭を下げる。

こういう時の体制ってこうだよね？ってテレビかなんかで見た知識を遣う俺だけど

やっぱり自然と頭を下げる形になって言葉も流れるように出てくる不思議。

親父さんがどう言葉を向けてくるか静かに待つ俺。

人生で一度しかないはずのこの場面は、緊張よりも穏やかさが勝っていて

見ている全員の重苦しかった空気を

どうやら明るいものに変えたらしい事は確かだった。

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