[doll]⑮登坂広臣 (ページ41)

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広臣side ページ41

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撮影後、仕事がある組とない組で分かれて車に乗る。

俺はない方の車に健ちゃんと乗り込んだ。

「臣ちゃん、強なったな」

発進した車の中で話し始めた健ちゃん。

心配そうに俺を見て、普段はあんま人のプライバシーに踏み込んでこない健ちゃんが珍しく一歩俺の中に入ってくる。

もちろんわかってる。

それは俺に対する不躾な興味なんかじゃなくって、純粋に心配してくれての事。

「Aさん以外に好きになる人現れると思うん？」

「…思わない」

「会いに行かへんくて後悔せえへんねんな？」

「…会う方が後悔する」

「それは自分の為に言うたった言葉？

　ストーカーから逃げないといけへんAさんに言うた言葉？」

「俺の為。もう一秒でも早く手の届かない場所へ行ってもらわないと、俺が苦しい。

　ドイツへ行っちゃえば嫌でも諦めがつく」

はっきりとした言葉で健ちゃんに言えば、心底ホッとしたようで浮いていた背中を背もたれに沈めた。

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