[doll]⑮登坂広臣 (ページ36)

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広臣side ページ36

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「あいつ、いつ向こうに行くんだろ」

ぬるくなったビールを飲みながら、何気なく呟いた言葉は隆二も気になっていたようで。

"いつだろね"なんて言いながら。

「シンさんに聞いてみたら？」

「…まあそうなんだけど。聞いた所でどうにもなんねーし」

まさか見送りになんて行けねーしさ。

あいつだって俺に来られたら決まずいだろうしね。

「向こうで変な男に絡まれないといいね」

「そーだね。たぶん静かに暮らしたいって言ってたから、田舎の方に行くんじゃねーかな」

人口の少ない小さな国へ行って、さらに誰もいないような場所へ行って。

きっとホントの最低限の人との関わりしかもたないで、ゆっくりひっそり生きてくんじゃないかと思う。

関わってくる人すべてを遮断して、面倒ごとに巻き込まれるようになるならさっさと見切りをつけて違う場所へ。

しがらみも情もない町で自分ひとりならいくらでも好きに身動き取れるしね。

「少しでも安心して暮らせるといいね」

そう言った隆二の横顔が少し寂しそうで。

"そうだね"って答えた俺の声が聞こえてねーみてーだった。

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