[doll]⑮登坂広臣 (ページ33)

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広臣side ページ33

※

「毎日でも酒付き合うけどー。俺毎日暇だしー」

グラスを掲げる直人さんが暇だ暇だとアピールするけれど

この人一番忙しいでしょって誰もが知っている。

優しい嘘に癒されながら、仕切り直した飲み会で久しぶりに泥酔した。

「臣ちゃん、寝てもーた」

意識の遠くの方で健ちゃんの声がする。

寝転がってる俺にかけたられた誰かのジャケット。

んー…隆二かな。

このにおい。

誰かのにおいに包まれてウトウトする中

もうAを抱きしめて寝る事もないんだと、またAの欠片を拾って零れる涙。

あー…いつまで泣いてんだろ、俺。

これじゃああいつの事泣き虫だななんて、もう言えねーな。

堕ちていく夢の中で、あいつの欠片を全部拾い集めたら

あいつになんねーかなって、夢の中で夢みて―な事を願った。

こうやってまた一日が過ぎて

これを何度も積み重ねればきっとこの苦しさは薄まってくる。

仕事を頑張って

ライブで皆を楽しませて

そうやって今までのAのいない日常に戻していけば、また俺は

笑ってステージに立てるはず。

わかっているのに、俺を追い詰めるのは頭の中でリフレインするcosmosで。

でもこの運命は哀しいものじゃないと、自分に言い聞かせた。

じゃないと、俺もAもただ傷ついただけ。

俺達の時間は、間違いなく幸せな時間だったんだから。

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